バッテリーを自社で作らない電気自動車メーカーは行き詰まる?
電気自動車なんて、モーターとバッテリー積むだけだから作るの簡単、いつでも作れる。HVと殆ど変わらないというような記事を見ますが本当にそうでしょうか。
私は中の人ではないので、Electrek(https://electrek.co)やその他のニュースとして出てくる情報をもとに判断するしか無いのですが 、実際には、量産したくても量産できなくなる可能性があると思っています。
それは、肝心要の重要部品であるバッテリーの入手に苦労するからです。Teslaもモデル3の生産台数が Panasonicの電池生産に引っ張られたことがありました。
今年はBEV界隈がザワザワしており、トヨタもBYDやCATLと協業すると発表するなど、バッテリーをいかに安定供給してもらうか各社の思惑が見て取れます。
先人を切っているメーカーはもう少し先を見据え、自分のところで使う分は自分で生産するという準備を始めています。
VWの動き
VWは今後10年間で、70の新しい電気モデルと約2,200万台の電気自動車を生産する予定であり、これを達成するためには大量のバッテリーが必要となります。
ヨーロッパのみでも VWの2025年以降の年間容量は 150GWhを超えており、アジアでも同様の需要が予想されます。現在、ドイツの自動車メーカーは、LG(韓)、Samsung(韓)、CATL(中)などの既存のバッテリーセルメーカーと取引を行っていますが、中国国内で電気自動車メーカーが爆発的に誕生していることや需要を考えると、中国国外のメーカーへの出荷優先度が下がってしまい、思ったような生産ができなくなる可能性があります。
そこで、VWは将来的に独自のバッテリーセル生産も検討しています。
ニーダーザクセン州のザルツギッターにパイロットラインを設置し、NorthVolt社(元テスラ幹部によって設立されたスウェーデンのスタートアップ)と協力して電気自動車用のバッテリーセルの生産をすでに開始しているそうです。
VWはこのスタートアップと50:50の出資比率で合弁会社を設立し、2020年にはザルツギッターに 16GWhのバッテリーセル工場の建設が開始される予定です。
併せて、バッテリーリサイクルパイロットラインもザルツギッターで建設中で、こちらも2020年に稼働を開始する予定とのこと。
Teslaの動き
Teslaは上海のTesla Gigafactory 3で BEVの生産をまもなく開始しようとしていますが、こちらは、政治に少し振り回されています。
中国とトランプ政権との貿易戦争に伴い、米国車両の関税引き上げを回避するために、中国での生産計画を前倒しさせることを決定、当初は他の工場と同様に新工場でもバッテリーセルと車両生産の両方を行うはずだったのですが、LG Chemからバッテリーセルの供給を受ける計画に変更。(Panasonicではないです)
中国製モデル3のバッテリーセルを元々使用していたNCA(ニッケル-コバルト-アルミニウムの三元系)から、従来はパワーウォールなどでのみ利用していた NCM(ニッケル-コバルト-マンガンの三元系)バッテリーセル(NCM811バッテリー)に切り替えるそうです。このバッテリーは従来のバッテリーよりもニッケルの割合が多く、よりエネルギー密度が高くなっていることと、レアメタルのコバルトの量が半減しているところもポイントです。
また、LG Chemからは、2022年にはEV向けの、ニッケルの割合がさらに多い4要素リチウムイオンバッテリーセル(NCMA)の量産を開始できる可能性があるとアピールされたことも LG Chemを採用した大きなポイントのようです。
それに加えて、Teslaは最近、より高性能の新しい長寿命バッテリーセルの特許を申請していると報じられたことから、バッテリーの自社開発も進めていることがわかります。
ところで、2020年に量産開始するという全固体電池、EVなどでも気軽に利用できるくらい安価で安定供給が可能なのでしょうか?各社の動きを見ている限りはそうは思えないのだけど。
それでは!